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文献詳細

雑誌文献

検査と技術12巻10号

1984年10月発行

文献概要

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

アレルギー反応1—Ⅰ型

著者: 奥田稔1

所属機関: 1日本医科大学耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.877 - P.882

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Ⅰ型アレルギーとは
 Coca,Cookeら(1923)は,喘息や花粉症(鼻アレルギー)などのアレルギー性疾患は動物のアナフィラキシーショックやアルサス反応などのアレルギーと基本的に違うと考えて,特にアトピー性疾患と名づけた.アトピー(atopy)とはstrange(一風変わった)という意味なので,変わったアレルギーと考えたのである.なぜ変わっているかというと,発症には素因が重要であることと,患者血清中に抗体の存在がPrausnitz,Küstnerら(1921)により証明されているが,沈降反応,凝集反応などの試験管内検査では抗体が発見されなかったことによる.また患者血清を他人の皮内に注射すると,血清中の抗体は長く注射部位にとどまっているのも変わった現象であった.
 この変わったタイプのアレルギーの秘密のヴェールをはぎ取ったのが,石坂夫妻(1966)である.このアレルギーの抗体は今まで知られなかった新しい免疫グロブリンE(IgE)に属し,血清中にはng単位(1μgの10-3)の微量にしか存在しないため普通の試験管内検査では証明できないが,後述の放射性同位元素標識免疫法や酵素標識免疫法など,特殊な感度の高い方法を用いると沈降反応が観察されること,IgEは皮膚,気道,その他の部位に存在する肥満細胞や血液好塩基球のIgEのレセプターと固着するので,注射部位に長くとどまって吸収されず消失しないこと,これらの細胞(一括して好塩基性細胞と呼ぶ)の形質膜で抗原と抗体が結合した結果,細胞からアレルギーの介達性化学物質(ケミカルメディエーター)が放出され,これが組織を刺激して発症することなど,Ⅰ型アレルギーの本態が次から次に明らかにされた.これに先立ちGell,Coombsら(1964)はメカニズムのうえからアレルギー反応をⅠ〜Ⅳ型に分類し,このアトピー性アレルギーをⅠ型アレルギーとした.アトピー性アレルギーの本態の解明と相まって,我が国では,Ⅰ型アレルギーの名称が広く用いられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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