技術講座 病理
脳大切片標本の作り方—通常パラフィン標本作製機器を用いる方法
著者:
諏訪幸次1
渡辺直子1
長嶋和郎1
所属機関:
1東京大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.1005 - P.1008
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古来,大きな脳の標本はツェロイジン包埋で長い日数をかけて作られていたが,最近,パラフィン切片による脳大切片作製法が確立され1),標本作製過程が早く,かつ容易となり,種々のルーチン染色も可能となったため,多くの施設ではこの方法が用いられてきている.しかし,薄切するのに超大型ミクロトーム(テトランダー型)を使用しなければならない.頻繁に大切片を作製する施設は別として,一般病理検査室で超大型用の機械を設置し使用するには,高価であること,広い場所を必要とすること,機械の使用法に慣れなければならないことなどの理由で,脳の小切片を多数作ることで間に合わせているのが現状であろう.しかし,脳に限らず大きな標本で,病変の広がりなどが一目暸然となる標本を作ることが必要な場合もあろう.
我々は普段用いている通常パラフィン標本作製機器を用いて大切片の作製を試みたところ,比較的容易に,かつ超大型ミクロトームを使用した場合と同様の標本を作製することが可能となった.ここに我々が使用した機器と作製方法の概略を作製手順に沿って紹介し,作製過程に生ずる重要な注意事項を付記する.