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凝集—凝固と間違いやすい凝集
著者: 大竹順子1
所属機関: 1順天堂大学病院中央臨床検査室
ページ範囲:P.729 - P.729
文献購入ページに移動 検査をする前に,その検体が検査に適しているかどうかをチェックしなければならない.すなわち血球計算は,①必要量採取されているか,②凝固していないか,③溶血していないか,④著しい乳び,赤血球凝集などがないか,などをチェックしてから検査を行う.上記①〜③の場合,検体を再提出してもらわなければ検査ができない.④の乳びは再提出の時間により乳びの強さが異なるので,再提出検体の検査を行うのも一つの方法である.スライドの検体は凝集の極めて著しいものであり,寒冷凝集素価が8192以上であった.室温約26〜27℃に放置すると,写真1の上の試験管のように横にしても血球がすべて強力に凝集しているため,血液が凝固しているかのように見える.このような検体と,凝固している検体は,判別をするのが難しい.特に検体を検査室に搬入するまでに時間がかかったり,より低温の場所に放置されていればなおのことである.抗凝固剤を入れ忘れて凝固した検体は,1〜2時間経過すると血餅がぶら下がり,血餅収縮がみられる.赤血球凝集が著しい場合は,血球が試験管の底に沈みクロットになるが,収縮はしないので区別がつく.しかし,弱い検体凝固があったり,寒冷凝集素価が下がると,それに応じてそれぞれ小さなクロットが血液中に混入している状態となるので,見分けにくい.37℃に保温し,クロットが消えるかどうか観察するのがいちばん確実な方法である.写真2は凝集の強さが少し弱くなってきた状態であるが,正常者と比べると右側の試験管壁を伝わる血球の状態がまだ異常なのが観察できる.写真3は凝集検体をそのまま標本(下)にした場合と,血液,スライドグラスを37℃に保温した標本(上)である.真ん中の正常者に比べると保温後もまだ標本むらが残る.写真4は顕微鏡で観察した保温後の状態であり,まだ凝集が残っているのがわかる.写真1のように凝集が特に著しい場合は,赤血球数,ヘマトクリット値,MCVの異常だけでなく,白血球数にも大きな影響を与える.凝集の強さにより測定値に及ぼす差は当然異なる.少なくとも写真2のような方法で,試験管壁を伝わる血液に少しでも凝集が認められた場合は,保温して検査をすべきである.
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