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微量金属と糖尿病
著者: 大久保昭行1
所属機関: 1東大臨床検査医学
ページ範囲:P.758 - P.758
文献購入ページに移動ヒトでは,膵のラ氏島のβ細胞内の分泌顆粒でZnがプロインスリンのヘキサマーと結合して,インスリンの貯蔵に一役を買っていることが明らかにされている.しかし,モルモットやコイプーでは,β細胞にZnが認められない.また,ラットでは細胞外液のZn濃度とインスリン分泌との間に明らかな関連を示す実験データは得られなかった,という報告もある.したがって,Znがインスリン分泌過程に不可欠の元素である,という証拠はまだない.
Znの急性欠乏では,味覚異常や腸性肢端皮膚炎が出現する.慢性欠乏では,発育遅延,生殖不能,細胞性免疫不全などの症状のほかに,糖負荷時のインスリン分泌の亢進反応が認められなかった,という報告がある.また,健康者では糖負荷後のインスリン分泌亢進に随伴して血清Zn値の上昇がみられるのに,Zn欠乏状態ではZnの上昇もみられなかったという.筆者らが,糖尿病患者群について空腹時の血清Zn値を測定したところ,健康者群との間に有意差はみられなかった.
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