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文献詳細

雑誌文献

検査と技術14巻1号

1986年01月発行

文献概要

病気のはなし

ショック

著者: 林四郎1

所属機関: 1信州大学第一外科

ページ範囲:P.10 - P.15

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ショックとは
 「あの人の言葉でショックを受けた」とか,「昨日の事件はショックだった」などと日常語としてもショックという用語が使われているが,ここで対象にしている「ショック」という現象はそれとはかなり趣きを異にした概念,内容をもっている.重篤な損傷に基づいて,生体に引き起こされた特異な病態に対してショックという用語が使用されたのは,200年以上も前のことである.しかし現在使われているような意味をもっているショック,あるいは「蒼冷な皮膚,冷汗,触れ難い脈拍,低血圧」など特徴的な病像に対するショックという用語が一般的に使われるようになったのは,この60年ぐらい前からといってよかろう.
 ショックは原因によって病態が違うし,しかもその病像が極めて多岐にわたり,複雑であるために,定義についても完全に統一されたものがまだないといってよい.しかし「何らかの原因により,急激な循環血液量の減少や血流分布に異常が起きて,重要な臓器への有効血流量が減少し,血液が流れる全血管床に対する血流のバランスに失調を起こし,全身組織の低酸素症を伴う循環不全,それによる組織の代謝障害を招いて,正常な細胞・組織機能を維持できなくなった,急激な経過をたどる全身性,重篤な臨床症候群」を指しているといってよかろう.完成されたショックの病像,末期の典型的な像は前に述べたような「蒼冷な皮膚,冷汗,触知し難い脈拍,低血圧」といえるが,体内に出現している病態には極めて複雑なものがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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