icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術14巻1号

1986年01月発行

文献概要

私たちの本棚

時代淘汰の運命—最後の診断—アーサー・ヘイリー 著

著者: 前田明1

所属機関: 1東邦大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.40 - P.40

文献購入ページに移動
 著者アーサー・ヘイリーについては,数年前あるテレビコマーシャルにも登場したことがあり,この『最後の診断』を含めた幾つかは映画化されているので,馴染みの方も多いのではと思う.彼の著書には,ホテル,大空港,自動車,マネーチェンジャーといった,一つの企業に題材をとったものが多く,こうした組織に内在する問題を主軸に,そこで働く人々の内面的描写と,取材の精緻さが醸し出す情景描写に惹かれる.
 物語は,ニューヨーク州に隣接するペンシルバニア州バーリントの,管理上多くの問題をはらんだ地方病院が舞台となっている.表題の『最後の診断』は病理検査を指すが,そこの責任者でもはや進取の気性を失っている,頑迷一徹と思える老病理学者ピアスンは,病理検査報告の遅滞に端を発した病院執行部の改善勧告に,不服ながらも従わざるをえなくなる.そこに新しく着任した若き有能な病理医コールマンは,最新の医学知識を身につけ,古い体質の検査部門の改革に情熱を傾け,両者は反目する.しかし老病理医は,自らの退嬰主義が生んだもはや取返しのできない過失から,32年間築き上げてきた牙城を明け渡し,去らねばならない羽目となる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?