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文献詳細

雑誌文献

検査と技術14巻12号

1986年11月発行

文献概要

技術講座 病理

凍結乾燥真空包埋法

著者: 森下保幸1 森茂郎1

所属機関: 1東京大学医科学研究所中央検査部

ページ範囲:P.1271 - P.1275

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凍結乾燥真空包埋法の原理および利点
 免疫組織化学的検索は,主として未固定材料を用いて行われてきた.最近,多種類の抗体が開発され,これらのうちにはホルマリン固定,パラフィン切片での免疫組織化学的検索が可能なものもある1).しかし,このような切片に用いることのできる抗体の数はまだ少なく,大部分の抗体では凍結させた未固定材料に頼らざるをえない.未固定材料は,周知のように液体窒素または,ドライアイス・アセトンにて冷やしたn-ヘキサンなどで瞬間的に凍結させ,クリオスタットを用いて薄切して染色するのであるが,このような方式にはいくつかの難点がある.例えば,最近クリオスタットの性能は替刃の導入などにより向上し,以前ほどの熟練を要しなくなってはいるが,それでも相当の修練がいる.ことにクリオスタットで2μm切片を作製することには非常な熟練が要求される.また数個の組織をまとめて包埋し,薄切することも困難である.これとは別に,電気系統の故障によりストックしてある検体が解凍してしまうという事故も必ずしもまれではない.
 凍結乾燥真空包埋法2〜4)は,これらのトラブルを解決するための一つの方法である.この方法の原理は,生の組織を凍結させた後,強力な陰圧下に置くことによって組織内の水分を気化除去し,そののち組織を熱し,溶融パラフィンで浸透を行う,というものである.すなわち,固定液や有機溶剤を使わないでパラフィンブロックを作製する点が特徴である.本法で作製されたブロックは,通常の替刃式ミクロトーム刀で薄切を行う.従来のパラフィンブロックと同様に2μm程度まで薄切が可能であり,でき上がった標本は従来のパラフィン切片とそれほど大差のない良質のものが得られる.クリオスタットによる薄切切片と比べて切片が薄く細胞の重なりが少ないため,細胞の形態や染色態度などをより詳細に検索できる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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