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文献詳細

雑誌文献

検査と技術14巻13号

1986年12月発行

文献概要

トピックス

ヒューマン・モノコンポーネントインスリン

著者: 山東博之1

所属機関: 1国立病院医療センター内分泌代謝科

ページ範囲:P.1381 - P.1381

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 インスリンを必要とする糖尿病患者には,ブタやウシの膵臓から抽出したブタインスリンやウシインスリンを注射していましたが,ウシやブタには限りがあります.このため,近い将来に世界中でインスリンが足りなくなるおそれが出てきました.ところが,たまたま遺伝子工学の発展によって,ヒトインスリンを人口的に製造することが可能となったのです.
 我々が生まれ,成長し,生きていくためには,さまざまな蛋白質,ホルモン,酵素を必要としますが,あらゆる細胞がその中に存在する遺伝子の指示に従って,個々の細胞に特有な蛋白質,ホルモンなどを産生します.これらの物質はアミノ酸がいくつもつながってできており,細胞の核の中の染色体に存在する遺伝子がアミノ酸の種類とその配列を決定します.ヒトインスリンは21個のアミノ酸から成るA鎖と,30個のアミノ酸から成るB鎖(30番目のアミノ酸がヒトではスレオニンであるのに対してブタではアラニン)が1個ずつS-S結合を介して組み合わさってできています.現在使われているブタインスリンのB鎖の30番目のアラニンを,人工的に酵素を用いてスレオニンと入れ替えると,ヒトインスリンが得られます.この方法では,不足する可能性があるインスリンの産生が増えるわけではありません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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