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形態学的検査と技術 血液と病理 病理
[9]心筋の検査法—虚血性心疾患の診断法を中心として
著者: 石山昱夫1 高津光洋2
所属機関: 1東京大学医学部法医学教室 2東京慈恵会医科大学法医学教室
ページ範囲:P.596 - P.601
文献購入ページに移動冠不全に基づく急死例を剖検ならびに組織学的検査によって確定することは,予想外に難しいものである.臨床的にみれば,あれだけ劇的な急死をしたのだから,相当にひどい変化があると予想していたにもかかわらず,剖検してみたらほとんど変化が見られないという例が,法医解剖や行政解剖の場合によく経験される.これは,病変が起こってから死亡するまでの間の時間が短いために,形態学的に把握できるまでに組織が変化していないからである.
例えば,図1に記したのは,WHOがそれまでの心筋梗塞例について検討し,心筋梗塞発生から形態学的変化の進行度を経時的にまとめたものであるが,これからみても,発生後半日くらいは頼りになるべきものがないというのが実感である.しかし,心筋梗塞が発生してから,WHOの基準に合った梗塞像が把握できるようになる1日くらいの生存例においては,すでに臨床的に分析が進行しいるわけであるから,死因としては問題がないことが多い.死因が不明であるから剖検するという法医解剖や行政解剖の場合には,このような臨床データがあるわけではなく,しかも,まったく超急性に虚血性心病変で死亡してしまったものでは,WHOの分析とは別の方法で証明するしか方法はないわけである.これに対して生化学的方法なども試みられているが,今までに絶対的と考えられるものはないというのが現状である.一方,組織化学的に心筋梗塞を分析してみようという方法も試みられ,さらに,近年ミオグロビンの染色を酵素抗体法によって行うことにより比較的新鮮な(発生後1〜2時間)梗塞例についてもその病巣の範囲を記録するということも可能となっているのである.これらをまず紹介し,次いで今までの染色法とそれらとの対比を行ってみることとして,このような基準に基づいて従来の染色法を詳細に観察すると,それなりの変化が見られるものであることが理解されれば幸いである.
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