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病気のはなし
IgA腎症
著者: 酒井紀1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学第二内科
ページ範囲:P.312 - P.317
文献購入ページに移動IgA腎症とは,1968年フランスのBerger博士らによって提唱された糸球体疾患である.彼らは,従来から糸球体疾患と考えられてきた患者の腎生検材料を,光顕法,蛍光抗体法,電顕法で詳細に検討し,特に免疫組織学的検索の結果,糸球体メサンギウム領域を中心にして,免疫グロブリンの構成成分の中で,IgAを中心とした免疫蛋白が,び漫性に,強い特異な顆粒状沈着物として認められる一群を発見した.彼らは,さらに,このグループが,光顕的には巣状糸球体腎炎像を主体としてメサンギウムに沈着物が認められること,臨床的にも,血尿を特徴としているが比較的他の症状に乏しく,経過が比較的良好であるものが多いことなどから,この群を独立した疾患単位をもった原発性糸球体疾患であることを報告した.
このBergerらの報告以来,この疾患概念に相当する腎疾患の報告が欧米各国から相次いだが,わが国でも,筆者らが1972年に報告したのを皮切りに,多くの研究者がこの新しい概念をもつ腎疾患に注目するようになった.その後,本症は糸球体疾患の主要病型の一つとして,慢性糸球体腎炎の主体をなしていることが明らかとなり,IgA腎症の名称で最近の腎臓病の教科書に記載されるようになった.
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