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文献詳細

雑誌文献

検査と技術15巻5号

1987年04月発行

文献概要

臨床生理検査と技術 Ⅶ 呼吸機能検査

[1]呼吸機能検査とは

著者: 井川幸雄1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学臨床検査医学教室

ページ範囲:P.592 - P.593

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胸郭,肺,気道の解剖と呼吸筋
 肺と心臓を入れるかこのような骨格を胸郭といい,胸椎(12個),肋骨(12個),胸骨(1個)からできている.肋骨は胸椎に対応して左右に各12本あり,弓なりに曲がって前方で胸骨につく.上位ほど短く,曲がりかたが強い.最下位の二対は短く胸骨に達せず,上位の肋骨に付いている.肋骨は前方部分が軟骨で可動性を増すとともに,衝撃を受けたときに緩衝装置として働く.呼吸運動を行う筋が呼吸筋で,肋間筋と横隔膜がこれに属する.肋間筋は肋骨の間の隙間にあり,二層になっている.外層の外肋間筋は筋線維が外側上方から内側下方へ,内層の内肋間筋は筋線維が内側上方から外側下方に向かってそれぞれ走っている.前者が収縮すると各肋骨が持ち上がり,胸郭が大きくなり息が吸い込まれる(吸気).後者が収縮すれば各肋骨が下へ下がり息が吐き出される(呼気).横隔膜は胸腔と腹腔との境にある横紋筋の板で上方に凸の円蓋を作っている.この筋線維が収縮すると平らになって胸腔が広がり,吸気が起こる.収縮がやめば肺の弾力による肺の収縮が起こり,横隔膜は再び胸腔内に突出する(呼気).
 正常の状態では吸気に際してのみ呼吸筋が働き,呼気は肺の弾力(伸展されたポテンシャルエネルギー)で行われるが,閉塞性病変では呼気に際しても呼吸筋の仕事が要求される.一般に肺組織の固さが増したり(コンプライアンスの低下),気道の抵抗が増したりすれば,呼吸筋の仕事は増加し,肺気腫などでは呼吸筋の酸素消費と炭酸ガス産生が筋の疲労を悪化させ,アシドーシスを重くする場合も生ずる.図に示すように空気を呼吸する呼吸器系は,鼻腔,咽頭,喉頭,気管,気管支,肺からできている,肺の左右の胸腔を満たす一対の半円錘状の器官で,右肺のほうが左肺よりもやや大きい.右肺では上,中,下の3葉に分かれ,左肺は上下2葉に分かれる.気管支は肺の内部で樹状に分岐し,肺の各小葉に入って細気管支となり,さらに呼吸気管支を経て肺胞に終わっている.管壁の軟骨は,気管支の分岐が進むとともに不規則な板状となり,管の末梢に及ぶと消失してしまう.筋や粘膜もだんだん薄くなり,ついには上皮細胞(核のある立方体の細胞と無核の扁平な細胞)の単層となり,これが呼吸上皮と呼ばれる.これが呼吸細気管支と肺胞の壁を作っている.また肺の表面と胸壁の内面を覆う漿膜を胸膜(肋膜,pleura)という.肺を覆うものを肺胸膜,後者を壁側胸膜という.両者の間の狭い空間を胸膜腔といって,中に少量の漿液(胸膜液)が入って両胸膜面の摩擦を少なくしている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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