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文献詳細

雑誌文献

検査と技術15巻6号

1987年05月発行

検査法の基礎理論 なぜこうなるの?

骨髄移植と血液型

著者: 小林信昌1 城所正子1

所属機関: 1東海大学病院輸血センター

ページ範囲:P.693 - P.698

文献概要

骨髄移植の歴史
 ヒトの骨髄移植は,1939年Osgoodら1)が再生不良性貧血の患者に健康者の骨髄細胞を静注したが,骨髄の生着を見ることなく失敗した症例に始まったといわれる.1957年Thomasら2)は,慢性リンパ性白血病の患者にX線の全身照射と化学療法を行った後,ABO型が同じ骨髄提供者(Donor)の骨髄を静注したところ,移植後15〜23日目にDonor型の赤血球が35〜50%出現したのを認め,一過性の骨髄生着とした.さらに骨髄移植の安全性も確認し,臨床への応用の道を切り開いた.その後,1958年フランスのMathéらはユーゴで発生した原子炉事故の際,致死量以上を被爆したと思われる6名の技師に対し,胎児肝細胞や成人の骨髄細胞を移植し,重症の1名を除き5名を回復させた.この原子炉事故以来,骨髄移植は一時的流行を見たが,骨髄の生着率がきわめて低く,1963年以後急速に激減した.日本においては1959〜1960年代にかけて骨髄移植が行われたが,全体的に見て不成功に終わっていた.
 この時期での骨髄移植が失敗した理由として,取り扱われた患者はすべての治療法に失敗し,きわめて悪い全身状態で移植が行われたこと,白血球抗原(human leukocyte antigen;HLA)に関する知識が学問的に普及しておらず,そのために致命的な急性移植片拒絶反応(graft versus host reaction;GVHR)が起こったことが考えられている3).しかしながら骨髄移植が再び脚光を浴びた背景には,臨床経験の積み重ねとその反省や地道な動物実験の繰り返しがあり,同時に主要組織適合抗原(HLA抗原)の移植免疫学の進歩,免疫抑制剤の開発や白血病の治療法の確立,そして抗生物質や成分輸血などの支持療法の発達が考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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