検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
白血球の三峰性粒度分布
著者:
巽典之1
津田泉2
木村雄二郎2
所属機関:
1大阪市立大学臨床検査医学
2大阪市立大学病院中央臨床検査部
ページ範囲:P.795 - P.799
文献購入ページに移動
粒度分布(size distribution)とは,細胞の容積分布のことである.古典的血液学において赤血球の大小不同を調べるのに,プライス・ジョンズ曲線が利用されてきた.この方法は,ギムザ染色標本を用いて視野縮小器とスケールをつけた顕微鏡で赤血球直径を測定していくものであるが,手技的に面倒で,時間がかかるためあまり利用されていなかった.その後,自動血球計数器が開発され,平均赤血球容積(MCV)をもって大小不同症の指標とされてきたが,MCVはしょせん平均値であり,細胞分布の広がりを示すものではなかった.ここで登場したのが全自動型自動血球計数器である.この全自動型計数器は血球数と血球容積を各細胞ごとに精密に測定しうると同時に容積分布を描出できる.この機器の完成の陰には電子光学,流体工学,光学の技術的進歩が隠されているといっても過言ではない.
この高度に完成された計数器は操作が簡単で,少量のサンプルで,短時間に各種データを打ち出してくれる.粒度分布曲線のほか多くの解析値もこの出力データの一部である.臨床検査室としては,この粒度分布について理解を深めると同時に,この結果を臨床医のもとに届ける努力が必要である.