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血中アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の臨床応用—肝臓病を中心に
著者: 三浦力1
所属機関: 1鹿児島大第2内科
ページ範囲:P.1207 - P.1208
文献購入ページに移動しかし,これらの酵素値がほんとうに肝臓の炎症の程度や進展状態を正確に反映しているといえるだろうか.実際,臨床の現場でも血中GOT,GPTがつねに低値で落ち着いているにもかかわらず,肝硬変症,肝臓癌に進行し,予後不良の症例も少なくない.また逆に,GOT,GPTが長期間にわたり変動する症例で予後良好と思える症例も,けっこう多い.医師も患者もGOT,GPT値を参考にしながら経過を見ているといっても過言ではないが,はたしてこれでいいのか,という疑問も起こる.冒頭に述べたように,GOT,GPTが一般的に肝臓病の診断に用いられるようになってまだ30年くらいしかたっていないのである.それ以前は黄疸と検尿所見などによって肝臓病の診断がなされていたであろうから,肝疾患患者の予後にGOT,GPTの上昇,変動がどれほど悪影響を及ぼしているのかがほんとうに確認されるのは,これからである.
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