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細菌検査の機械化について
著者: 菅野治重
所属機関:
ページ範囲:P.1231 - P.1231
文献購入ページに移動 自動化がもっとも遅れていたと思われる細菌検査の分野でも,最近は機械化の動きが激しくなってきた.現在の細菌検査は,塗抹検査,分離培養,同定検査,感受性検査の四つの検査から成り,現在,機械,試薬製造メーカーがもっとも熱心なのは同定検査の機械化である.細菌検査の機械化で個人的にもっとも期待する点は,治療に必要で十分な情報を迅速に臨床側に提供することである.考えてみると主治医として検査に要求することは,まず患者の疾患が感染症か否かであり,感染症であれば,細菌性,ウイルス性,真菌性等の病原微生物のおおまかな分類である.現在の強力で広域性の抗菌剤の使用を前提とすれば,細菌性と判明するだけで治療はかなり確実に行える現状にあり,同定はむしろ確認の意味が強い検査になっている.また機械化により検査精度が向上するという意見もあるが,検査の方法が異なり,現在は各検査室の同定レベルも大きく異なるため,同定精度の単純な比較はできない.実際,従来より熱心に同定検査を行ってきた検査室ほど機械化には消極的なように見える.むしろ検査技師の交代が頻繁な検査室や,新人の技師の多い検査室が,同定精度維持のため機械化に積極的なようだ.このようにおのおのの検査室の事情により機械化の必要性が異なる点を認識する必要がある.時代の流れとして機械化は避けられない以上,むしろこの際に従来の細菌検査の流れを変えるような総合的なシステムの開発が期待される.それは感染症の治療を最優先させ,治療に必要な情報を迅速に臨床側へ返すことに徹した検査法の開発である.特に同定検査は治療を前提とした迅速化のために,抗菌剤側から適応菌種を臨床的に分類してもよい時機にきていると思われる.
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