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文献詳細

雑誌文献

検査と技術16巻12号

1988年11月発行

文献概要

ザ・トレーニング

嫌気性菌の分離のための培地

著者: 渡辺邦友1 上野一恵1

所属機関: 1岐阜大学医学部付属嫌気性菌実験施設

ページ範囲:P.1382 - P.1385

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 嫌気性菌は,日和見感染症の原因菌として重要です.嫌気性菌は,多くの場合,他の嫌気性菌や通性嫌気性菌などとともに化膿性の病巣を作ります.このように通性嫌気性菌などと共存する嫌気性菌は臨床材料からうまく分離するには,非選択培地とともに選択培地を用いる必要があります.また,増菌用培地も忘れてはいけません.
 さて培地の選択に言及するまえに,注意しておきたいことがあります.いくら適切な培地を用いても,適切な材料の輸送法と適切な培養時間の選択がないと,嫌気性菌の分離は不成功に終わります.BacteroidesfragilisやClostridium Perfringensなどは,比較的耐気性の強い菌で,空気に触れても菌数の減少は比較的ゆっくり起こりますが,その他の多くの嫌気性菌は,空気に触れると1時間にもとの菌数の1/10〜1/1000の菌数に激減します.ですから,検査材料は嫌気的環境下において検査室に運ばれるべきです.そして,検査室では,材料採取後3時間以内に培養を完了するようにすべきです.また,多くの嫌気性菌の分離には最低48時間が必要で,pigmenting Bacteroides,Mobiluncus spp.,Actinomyces spp.などいくつかの嫌気性菌では5〜7日間の培養が必要なこともしばしばです.48時間で集落が見られないからといって,培地をすぐ廃棄することは避けなければなりません.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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