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文献詳細

雑誌文献

検査と技術16巻6号

1988年06月発行

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トピックス

紅斑熱リケッチア症

著者: 内田孝宏1

所属機関: 1徳島大ウイルス学

ページ範囲:P.550 - P.551

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 リケッチアは宿主細胞内でしか増殖できない(偏性細胞寄生性)グラム陰性細菌である.分類上リケッチア属は発疹チフス群,紅斑熱群,つつが虫病群に分けられる.
 わが国のリケッチア症にはつつが虫病が古くから知られているが,発疹チフス群の発疹チフスは終戦直後の発生以来まったくなく,発疹熱も近年では発生の報告はない.紅斑熱群のリケッチア症は,最近までわが国には知られていなかった.ロッキー山紅斑熱は南北アメリカ大陸に限られ,ボタン熱(地中海紅斑熱)は地中海沿岸やアフリカにみられ,シベリア・マダニチフスはウラル山脈東部のアジア大陸にあり,ニュージーランド・マダニチフスはオーストラリア大陸に限局している.紅斑熱の媒介節足動物(ベクター)はマダニで,またマダニの体内では病原体は卵にも入り子孫に伝わる(経卵伝播).したがって,マダニは病原体保有動物でもある.ノネズミ,リス,ウサギ,イヌが感染するが,ヒトも感染する.このほか,紅斑熱群にはイエダニをベクターとするリケッチア痘(水痘に似た症状)があり,これは極東および北アメリカ大陸東部にみられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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