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文献詳細

雑誌文献

検査と技術16巻7号

1988年06月発行

文献概要

免疫化学検査法 Ⅱ 測定法の実際 1・血漿蛋白

⑨トランスフェリン,セルロプラスミン

著者: 牧野義彰1

所属機関: 1昭和大学医学部第一生化学教室

ページ範囲:P.667 - P.669

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トランスフェリン
 構造と生理的機能
 トランスフェリン(TF)はβ-グロブリン分画に属する血漿蛋白で,主に肝臓で合成され,血中に分泌される.血清中では鉄と結合して生体内の種々の組織へ鉄を輸送する役割をもち,生体内の鉄の代謝に関与している.また細胞の増殖因子としても知られている.この蛋白は分子量が約80,000のsingle peptideであり,peptide鎖の中央よりC末端側に2本の糖鎖を有する糖蛋白質である.PeptideのN末端とC末端付近にはおのおの1原子の鉄と結合するsiteがあり,この部分に鉄が結合するか否かによって血清中には次の4種類のTFが存在する1).すなわち,鉄が両方のsiteに結合したものをdiferric TF(Fe2-TF),N-site,C-siteのいずれかに結合したものをA-site monoferric TF(Fe-A-TF),B-site monoferric TF(Fe-B-TF),両siteにまったく鉄が結合していないものをapo TF(Apo-TF)と分類している.これらの四つのタイプのTFは正常の血清中に存在し,疾患によってその割合が変化するという報告がある.それらは6M尿素ポリアクリルアミド電気泳動の後に交叉免疫電気泳動を行うと分離できる2)
 TFは血清中に正常では200〜280mg/dl含まれている.前述のようにこれらのTFには鉄結合数により四つのタイプがあるために,血清中のTFには鉄が完全に飽和されていないことになる.鉄が完全に飽和されたときの鉄の量を総鉄結合能(total iron bindingcapacity;TIBC)という.このTIBC値は血清中のTF値と相関するものである.これに対して血清鉄はTFに実際に結合している鉄の量を示すもので,この値が鉄結合能(binding iron;BI)を示すものである.総鉄結合能から鉄結合能を差し引いたものは潜在性鉄結合能(unsaturated iron binding capacity;UIBC)という.鉄結合能は正常が30%程度で維持されており,この値が腸管からの鉄の吸収にも関与しているとも考えられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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