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免疫化学検査法 Ⅱ 測定法の実際 6・自己抗体
①自己免疫疾患と自己抗体
著者: 東條毅1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部内科
ページ範囲:P.744 - P.747
文献購入ページに移動免疫学の基本的な原則として,生体は自己の構成成分に対して抗体を作ることはない,と長く信じられてきた.これはEhrlichの実験(1901年)以後,多くの人によって確かめられたことであった.すなわち,彼はヤギに,他のヤギの赤血球を注射して抗赤血球抗体を作った.しかし,ヤギにそのヤギ自身の赤血球をどんなに注射しても,抗体を産生させることはできなかったのである.
しかし他方では,これと矛盾するような事実もほぼ同じころに気づかれていた.すなわち,自己の構成成分に対して産生される抗体―自己抗体の存在である.臨床免疫学の歴史を振り返ると,最初に注目された自己抗体はDonathとLandsteinerによって発見された特殊な抗赤血球自己抗体である.特発性寒冷ヘモグロビン尿症では,低温で患者の抗体が自己赤血球と反応して溶血現象を起こす.1904年のこの発見以後,種々の自己抗体に対する臨床検査が開発された.この結果,多くの自己抗体が見いだされてきた.これによって,自己抗体に対する理解も深まった.この結果,自己免疫疾患とは何かがしだいに明確になってきた.
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