icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術16巻7号

1988年06月発行

文献概要

免疫化学検査法 Ⅱ 測定法の実際 8・ホルモン B 甲状腺ホルモン

④サイログロブリン

著者: 加藤亮二1 野口志郎

所属機関: 1野口病院

ページ範囲:P.818 - P.821

文献購入ページに移動
サイログロブリンとは
 ヒト甲状腺は気管上部,甲状軟骨の下部に付着する内分泌腺であり,重量15〜20gの峡部を中心とする,左右両葉から成る扁平組織である.この甲状腺は図1に示すように,濾胞構造をもち,さまざまの大きさの類球形を示す.濾胞構造は表層を形成する濾胞上皮細胞と濾胞腔から成り,サイログロブリン(thyroglobulin:Tg)はこの濾胞上皮細胞で合成され濾胞腔にコロイドとして貯蔵される.Tgは正常甲状腺で組織1g中50〜100mg含有し,等電点4.5で,アミノ酸5,500個と300個と単糖から成る分子量67万(沈降係数19S)のヨウ素化糖蛋白質である.また,このTgは甲状腺ホルモン(サイロキシン;T4,トリヨードサイロニン:T3)の合成の場となり,さらに甲状腺ホルモンやヨウ素アミノ酸をTgのペプチドに組み入れ貯蔵する構造をもっている.甲状腺内でのTgの合成機序はTg遺伝子が濾胞上皮細胞の核内で転写されて,m-RNAにより小胞体とポリゾームを形成する.ここで翻訳されペプチドの合成,重合が行われる.生じたTg分子はGolgi装置を通って濾胞腔に運搬され,その過程において糖鎖の付加とヨウ素化を受けるといわれている.
 従来,甲状腺濾胞内に貯蔵されていたTgは,濾胞内にたまり体循環液中に流出しないと考えられていた.また,なんらかの理由によりTgが流血中に流出した場合に自己免疫疾患(橋本病など)が起こると考えられていたが,1961年Hjort1)らにより正常者血中にTgが存在することが証明されて以来,これらの考えかたも否定されるようになってきた.最近Tg測定の高感度法が行われるようになり,多くの甲状腺疾患で血中Tgが増加していることが明らかにされ,特にVan Herle2)らは,甲状腺分化癌で転移を伴うものにTgが高値を示す例が多いと報告し,Tgの測定意義が注目を浴びた.現状のTg測定法はラジオイムノアッセイ(RIA)3,4)およびエンザイムイムノアッセイ(EIA)5,6)により行われている.これらの測定が開発される以前の方法は血球凝集阻止反応,免疫電気泳動法あるいは沈降反応が行われていたが,感度が十分でなくTg測定の意義が不明とされていた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら