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文献詳細

雑誌文献

検査と技術16巻7号

1988年06月発行

文献概要

免疫化学検査法 Ⅱ 測定法の実際 8・ホルモン F 性腺ホルモン

①総論

著者: 中井利昭1 山田律爾2

所属機関: 1筑波大学臨床医学系臨床病理 2獨協医科大学臨床病理学講座

ページ範囲:P.845 - P.848

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性腺ホルモンの種類とその作用
 性腺ホルモンは,よく知られたことであるが,男性では主として睾丸から,女性では主として卵巣から分泌される(残りの一部は副腎から分泌される).これらの睾丸や卵巣は,いずれも下垂体前葉から分泌される性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体化ホルモン(LH)によって調節を受けている.さらにFSH,LH分泌は,その上位の視床下部で産生される性腺刺激ホルモン放出因子(LH-RH)によって支配されている.逆にLH-RH分泌やFSH,LH分泌は,卵巣または睾丸からの性腺ホルモンによって分泌抑制を受けている.したがって,視床下部-下垂体-睾丸系あるいは視床下部-下垂体-卵巣系は,いずれも一つの関連をもったサークルとなって睾丸機能や卵巣機能の恒常性を保っていることになる.以上,LH-RH,FSH,LH,性腺ホルモンは互いにフィードバック機序によってその分泌が調節されていることを図1にまとめて示すが,これらの関連を十分に理解していないと性腺ホルモンを正しく理解することができない.
 男性ホルモン(アンドロゲン)はC19ステロイドの総称であり,この中にはテストステロン,アンドロステンジオン,デヒドロエピアンドロステロン(DHEA),デヒドロエピアンドロステロン・サルフェート(DHEA-S)などがある。表1に各男性ホルモンの作用力価を示したが,テストステロンが生物学的にもっとも強力な男性ホルモンであるので,従来から男性ホルモンというとテストステロンが測定されてきた.ただし,このテストステロンは,血中に分泌され標的細胞に到達するとその細胞内へ取り込まれ,大部分が5α-還元酵素の作用を受け,C-4,C-5の二重結合に水素が添加され,ジヒドロテストステロン(DHT)となる.このジヒドロテストステロンが真の作用型男性ホルモンであるが,血中テストステロンとほぼ平行した変動を生ずるので,実際の診療上では血中テストステロン測定が行われている.なお,テストステロンは女性でも分泌され,女性では副腎由来15%,卵巣由来25%,デヒドロエピアンドロステロンやアンドロステンジオンより脂肪組織や肝などの末梢で転換されるもの60%である.当然のことながら,男性ではテストステロンの大部分は睾丸から分泌される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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