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文献詳細

雑誌文献

検査と技術17巻1号

1989年01月発行

文献概要

検査ファイル 試薬

発色性合成基質

著者: 鈴木節子1

所属機関: 1横須賀共済病院中央検査科

ページ範囲:P.68 - P.69

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[1]発色性合成基質とは
 1972年にスウェーデンのカロリンスカ研究所のBlombäck夫妻がボフォーズ社といっしょに新しい発色性合成基質を発表した1)のが最初である.Blombäckらはちょうどそのころ,フィブリノゲンがトロンビンによりフィブリンモノマーに転換される際に分離されるフィブリノペプチドA(FPA)のアミノ酸構造を研究しており,ヒトの場合,N末端がアラニン(Ala)に始まり,C末端がArgに終わる16個のアミノ酸の小さなペプチドであることがわかっていた.BlombäckらはFPAの種々の動物のアミノ酸配列を研究していくうちに,C末端から1番目のアルギニン(Arg)と2番目のバリン(Bal)と9番目のフェニルアラニン(Phe)が各動物とも共通していることに着目し,トロンビンはこれらのアミノ酸を認識して作用を発現することを見いだした.そして,このPhe,Bal,Argの三つのアミノ酸にベンゾイル基を付けてペプチダーゼの作用を防ぎ,さらにArgにパラニトロアニリン(PNA)という色素を縮合させたペプチドを合成した.案の定トロンビンはこのペプチドのArgのC末端を水解し,PNAを遊離した.また,トロンビンに対して比較的特異性の高い基質として発表し,この基質にsubstrateのSをとり,S-2160という名前をつけた.その後,さらに特異性の高い基質が合成され,現在に至っている.
 このようにして合成されたペプチド基質はTAMeや他のペプチド基質と違い,酵素によって遊離した物質自身が発色するか,または発色原物質を遊離させるので,発色性合成基質(chromogenic substrate)と呼ばれている.現在,合成基質は数十種以上にも及び,日常検査に汎用されるようになった.項目も多く,またプロテインC(PC),組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)およびプラスミノゲンアクチベータインヒビター(pAI)など,特殊な凝固線溶関連マーカーの測定にも適用されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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