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病気のはなし
膵癌
著者: 森俊幸1 黒田慧1
所属機関: 1東京大学医学部第一外科
ページ範囲:P.1266 - P.1272
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近年,膵癌は,著増傾向を示している.その原因は,膵癌に対する関心の増大,診断の進歩によるばかりでなく,環境因子などの変化による,発生率そのものの増加が主因になっていると考えられる.一方,その治療成績は,他の消化器癌に比し,著しく悪い.それは膵癌の生物学的悪性度と膵臓自体の解剖学的特性によるところが大きいと思われる.今日では,腫瘍径2cm以下のT1癌も発見されるようになってきたが,その全膵癌に占める割合はたかだか数%にすぎず,いまだ臨床例の大多数は根治切除が因難な進行癌である.そこで,わが国では,手術の拡大化が進められる一方,手術と補助療法の併用による集学的治療も種々試みられているが,その成績はいまだ満足しうるものではない.膵癌の治療成績の向上には,根治切除可能な段階における発見の必要性がますます強く認識されつつある.最近,わが国では,粘液の多量産生,貯留,膵管内増殖を特徴とする,根治切除率の高い新しいタイプの膵癌―粘液産生膵癌―の報告が増えつつあり,基礎,臨床面からさまざまな関心が寄せられている.
近年,膵癌は,著増傾向を示している.その原因は,膵癌に対する関心の増大,診断の進歩によるばかりでなく,環境因子などの変化による,発生率そのものの増加が主因になっていると考えられる.一方,その治療成績は,他の消化器癌に比し,著しく悪い.それは膵癌の生物学的悪性度と膵臓自体の解剖学的特性によるところが大きいと思われる.今日では,腫瘍径2cm以下のT1癌も発見されるようになってきたが,その全膵癌に占める割合はたかだか数%にすぎず,いまだ臨床例の大多数は根治切除が因難な進行癌である.そこで,わが国では,手術の拡大化が進められる一方,手術と補助療法の併用による集学的治療も種々試みられているが,その成績はいまだ満足しうるものではない.膵癌の治療成績の向上には,根治切除可能な段階における発見の必要性がますます強く認識されつつある.最近,わが国では,粘液の多量産生,貯留,膵管内増殖を特徴とする,根治切除率の高い新しいタイプの膵癌―粘液産生膵癌―の報告が増えつつあり,基礎,臨床面からさまざまな関心が寄せられている.
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