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文献詳細

雑誌文献

検査と技術17巻12号

1989年11月発行

文献概要

トピックス

日本における剖検率低下の現状

著者: 石河利隆1

所属機関: 1関東逓信病院病理学検査科

ページ範囲:P.1539 - P.1540

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 ある医療施設において,年間の死亡患者のうちで病理解剖(剖検)が行われた割合を剖検率といい,%で表している.一般に剖検率が高い施設ほど医療に対する自己反省がよく行われているとみなされ,剖検率は病院の医療水準を示す指標とされている.しかし近年,世界的に剖検率の低下が現れてきており,医療の将来を憂慮する声が高い.
 日本における剖検率は毎年,日本病理学会が刊行している『日本病理剖検輯報』の巻末に収録されている,各施設の院内剖検数,院内死亡患者数の一覧表から求めることができる.昭和52年から62年までの11年間の剖検率の推移を表1に示す.この表の国民全体の剖検率というのは全国の剖検総数の,その年における全国の死亡数に対する百分率として計算したものである.剖検率は11年間に大学付属病院でも,一般病院でも10%程度低下しているが,国民全体の剖検率は近年は5.3〜5.5%とほぼ横ばいの状態である.この理由は重症患者が家庭ではなく,剖検施設を備えた大病院で死亡する傾向が高まり,各施設の剖検率が低下しても国民全体としてはあまり影響を受けていないことにあると考えられる.剖検総数は昭和60年には4万体強であったが,以後,減少を示しているので,各施設における剖検率の低下がこのまま進むと,国民全体の剖検率もやがては低下してくることが予測される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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