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感染症の検査法 Ⅲ 検査法各論 [6]同定法 B 種別同定法 1 グラム陰性菌
①Enterobacteriaceae(腸内細菌)
著者: 浜本昭裕1
所属機関: 1長崎市立病院成人病センター検査部
ページ範囲:P.795 - P.800
文献購入ページに移動はじめに
菌の同定は,生化学的性状や血清学的性状の確認により行われるが,分離培地上の集落の観察も同定の一助となる.特に,分離頻度の高い菌種については,集落の色調や溶血性,粘稠性の有無,遊走性など外観で菌名の推定が可能な場合も少なくない.しかし近年は,分類学の進歩により菌名の細分化が著しく1),臨床材料から分離される菌種も多様化し,推定同定はもちろんのこと,臨床細菌検査室で汎用されていた従来法では,多種類の培地の保存や管理,仕事量や人員の問題などから,正確な同定がきわめて困難となってきた.さらに,化学療法の発達に伴う日和見感染症の増加2)や,非定型的性状を示す菌種の出現3)も,同定をよりいっそう困難なものとしている.
1970年代には,臨床細菌検査の分野でも同定用簡易キットが採用されるようになり,1980年代になると,検査結果の迅速な報告,作業時間の短縮などを目的として,自動機器が導入されるようになった.これらのキットや自動機器には,数値同定が採用されており,成績の判定に客観性をもたせ,個人差をなくすなど,従来法のもつ問題点のいくつかを解消している4).しかし一方では,保険点数や予算など経済的制約も多く,本稿では腸内細菌(Enterobacteniaceae)の同定法について,実際的に検査室で利用可能な方法を中心に解説する.
菌の同定は,生化学的性状や血清学的性状の確認により行われるが,分離培地上の集落の観察も同定の一助となる.特に,分離頻度の高い菌種については,集落の色調や溶血性,粘稠性の有無,遊走性など外観で菌名の推定が可能な場合も少なくない.しかし近年は,分類学の進歩により菌名の細分化が著しく1),臨床材料から分離される菌種も多様化し,推定同定はもちろんのこと,臨床細菌検査室で汎用されていた従来法では,多種類の培地の保存や管理,仕事量や人員の問題などから,正確な同定がきわめて困難となってきた.さらに,化学療法の発達に伴う日和見感染症の増加2)や,非定型的性状を示す菌種の出現3)も,同定をよりいっそう困難なものとしている.
1970年代には,臨床細菌検査の分野でも同定用簡易キットが採用されるようになり,1980年代になると,検査結果の迅速な報告,作業時間の短縮などを目的として,自動機器が導入されるようになった.これらのキットや自動機器には,数値同定が採用されており,成績の判定に客観性をもたせ,個人差をなくすなど,従来法のもつ問題点のいくつかを解消している4).しかし一方では,保険点数や予算など経済的制約も多く,本稿では腸内細菌(Enterobacteniaceae)の同定法について,実際的に検査室で利用可能な方法を中心に解説する.
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