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文献詳細

雑誌文献

検査と技術17巻7号

1989年06月発行

文献概要

検査ファイル 用語

人工基質

著者: 中根清司1

所属機関: 1名古屋大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.998 - P.999

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[1]人工基質とは
 酵素活性測定法を設定する場合には,緩衝液の種類と濃度・pH,基質の種類・濃度,補酵素の濃度,測定温度などの条件を厳密に設定しなければならない.この設定条件の中で,特に基質の種類を選ぶことがその酵素の持つ特異性,高感度,迅速測定を可能にし,臨床検査にもっとも有用な測定法となる.ところが,臨床検査室で測定されている酵素は,数多くある中で基質を限定できない酵素が多々あり,混乱の素となっている.このような現況から開発された基質を"人工基質(artificial substrate)"といい,基質の活性部位を変化させずに基あるいは化合物を結合させ,目的酵素に対し特異性,感度を増すなど,また生体試料の共存物質の干渉を避けるなどの利点を得るためにくふうし合成されたもので,"合成基質"(synthetic substrate)とも呼ばれている.
 一方,"発色性合成基質"(chromogenic substrate)と呼ばれている人工基質があり,凝固線溶因子の測定に用いられているトロンビン活性測定用基質,プラスミン活性測定用基質がそれである2).また,アミラーゼ活性測定法にも数多くの発色性合成基質が用いられてきた3).すなわち,Blue Starch法はその代表例で,デンプンにChibachron Blue F 3 GAという色素を結合させたもので,アミラーゼ作用によって水解された可溶性物質の色素量を比色し活性を求める方法である.
 以上のように人工基質,合成基質,発色性合成基質の3種の呼びかたがあるが,はっきり定義されたわけでない.一般的には合成基質と呼ばれることが多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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