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文献詳細

雑誌文献

検査と技術17巻9号

1989年08月発行

文献概要

検査ファイル 機器

血液粘度計

著者: 磯貝行秀1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学第三内科

ページ範囲:P.1224 - P.1225

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[1]目的
 血液の粘度(η)は,ずり応力(τ)/ずり速度(γ[γの上に点])比で表される(η=τ/γ[γの上に点]),ずりとは液体などの表面に接線方向の外力が加わる様式をいう.例えば,2枚の平行平板の間に液体を挟み,一方の板を固定し他方を平行移動させると,液体にはちょうど積み重ねたトランプカードを崩したときのような流動が生ずる.これを層流と呼んでいるが,ずり外力が加わったときにみられる.外力に対し液体表面の単位面積当たりに生成する応力をずり応力(shear stress,τ)と呼ぶ.一方,ずり外力によってカードが崩れていくように液体内部に層状の流動が起こるが,そこに流層間に速度勾配が生ずる.これをずり速度(shear rate,γ[γの上に点])と呼んでいる.したがって,ずり速度は接線方向の流速を平板間の距離で除して表される.すなわち,ずり速度=〔速度〕÷〔距離〕,シンボル表示ではm×s-1×m-1(m:メートル,s;秒)で,ずり速度はsec-1(1/秒)の次元をもつ.一方,応力は力の単位としてニュートン(N)が採用されており(N=kg・m・s-2),単位面積当たりに作用するずり応力はN・m-2で表され,単位名称としてPa(パスカル)と呼ばれる.したがって,粘度は[応力]×[時間]となりN・m-2×s=Pa・sで表示される.血液粘度では1/1000Pa・s=mPa・sが用いられている.従来は,C・G・S単位が使用されていたが,最近では国際単位系が一般的に使われている.なお,従来の1cP(センチポイズ)=1mPa・sである.
 血液粘度は,ずり速度によって変動を示すので「見かけの粘度」と呼ばれる.すなわち,ずり速度が低いときは粘度は高く,ずり速度が高いと粘度が低くなる.これをずり速度依存性と呼んでおり,また,このような流動的性質を非ニュートン粘性という.一方,血漿粘度は,ずり速度依存性を示さずニュートン粘性を示す.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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