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文献詳細

雑誌文献

検査と技術18巻1号

1990年01月発行

文献概要

トピックス

p-糖蛋白

著者: 菅原勇1

所属機関: 1東大医科学研究所病理学研究部

ページ範囲:P.89 - P.89

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 ある種の抗癌剤が効かなくなる薬剤耐性化現象のうちで,構造も作用機序も異なる多くの抗癌剤に同時に効かなくなる多剤耐性の分子メカニズムの解明が急速に進展してきている.p-糖蛋白(p-glycoprotein)といわれる,抗癌剤の排出を行うポンプ作用を有する蛋白が,耐性細胞に存在することがわかったのである.p-糖蛋白の遺伝子がクローニングされ,また,このp-糖蛋白に対する抗体が作られている1,2)
 多剤耐性を示す癌細胞は,①抗癌剤の細胞内濃度が低く保たれている,②抗癌剤の細胞外排出が亢進している,③膜蛋白に変化がある,という性質を有している.p-糖蛋白が増加しており,分子量は18万の糖蛋白である.この糖蛋白として今日までにわかっているのは,①ATP結合蛋白である,②ATPase活性を持つ,③アドリアマイシン,ビンクリスチンなどある種の抗癌剤を細胞内から細胞外へ排出させる,④カルシウムチャンネル阻害剤,プロゲステロン,エストラジオールなどと拮抗阻害する,⑤細菌や酵母のトランスポート蛋白と高い相同性がみられる,の5点である.アドリアマイシン,ビンクリスチン,コルヒチン,エトポシド,アクチノマイシンD耐性細胞で,この糖蛋白が出現してくるが,ブレオマイシン,メソトレキセート,シスプラチン耐性細胞で出現してこないことから,いろいろの抗癌剤耐性機構があるらしい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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