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文献詳細

雑誌文献

検査と技術18巻10号

1990年09月発行

文献概要

トピックス

アルツハイマー病アミロイドβ蛋白前駆体

著者: 田中静吾1

所属機関: 1京都大学医学部臨床検査医学教室

ページ範囲:P.1324 - P.1325

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 アルツハイマー病(AD)は脳血管性痴呆と並んで老人性痴呆の主要な原因疾患である.AD患者の脳には,①老人斑の中心部(コア)および脳血管周囲といった細胞外に沈着するβ蛋白,これに対して②神経細胞内にみられるアルツハイマー神経原線維変化という2種類のアミロイドを認める.このうち,①のβ蛋白(またはA4蛋白)は分子量約4,000の蛋白質で,1987年にこの蛋白質をコードするcDNAが報告されて以来,この分野の研究に分子生物学的手法が導入され,急速な進歩をみることとなった.本稿では,このβ蛋白に関する研究の現状を,検査学的観点からのトピックスを交えてまとめる.
 β蛋白は分子量十万余りの前駆体(amyloid β-protein precursor;APP)から生成されるが,この前駆体はレセプター様の構造を持つ糖蛋白で,β蛋白は膜通過領域と細胞外領域の境界部分に局在する(図).また,この前駆体には細胞外領域にプロテアーゼインヒビター(APPI)を持つAPP751,APP770,持たないAPP695の少なくとも3種類が存在し,これらは単一のβ蛋白遺伝子からalternative splicingによって産生される.この前駆体の代謝過程はいまだ解明されていないが,正常ではβ蛋白の内部での切断が最初に起きることを示唆する報告が最近なされた1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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