icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術18巻11号

1990年10月発行

文献概要

トピックス

末梢血幹細胞移植術

著者: 高上洋一1

所属機関: 1徳島大学医学部小児科

ページ範囲:P.1416 - P.1417

文献購入ページに移動
 抗癌剤により殺される白血病や悪性リンパ腫などの癌細胞の数は,投与される抗癌剤の量に比例して多くなる.同種骨髄移植術(bone marrow transplantation;BMT)は,体内の癌細胞を根絶するために,通常は投与できない大量の化学療法や放射線療法を行う.その後にドナー骨髄中の造血幹細胞を患者に点滴静注し,正常の造血機能を再構築する治療法で,各種の難治性癌疾患の治療に有用である.しかし,その施行にはHLA適合骨髄ドナーが必要となるため,全患者の1/4しかその恩恵を受けられない.またドナー由来のリンパ球が患者体内で増殖し,やがて患者の体組織を破壊するgraft versus host disease(GVHD)反応や,間質性肺炎などの致死的な合併症の発生頻度が高いため,安全で汎用性のある治療法とはいえない.自家BMTでは採取骨髄中に混入した可能性のある白血病細胞を除去する必要があるが,現在,有用・確実な除去法は確立していない.
 末梢血中にも骨髄と同様の造血幹細胞が存在する.その数は骨髄中の1/100ほどにすぎないが,強化療法施行後2〜3週後の骨髄回復期には数十倍にも増加する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?