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文献詳細

雑誌文献

検査と技術18巻6号

1990年05月発行

文献概要

増刊号 血液・尿以外の体液検査法 資料

涙液中の薬物濃度測定法

著者: 西原カズヨ1 春山尚美1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院薬剤部

ページ範囲:P.892 - P.893

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はじめに
 治療における薬物濃度モニタリング(therapeutic drug-level monitoring;TDM)が現在多くの施設で行われている.その濃度測定(therapeutic drug assay;TDA)のための試料としては血漿,血清,あるいは全血が用いられている.一般に測定された薬物濃度は,蛋白質と結合した薬物(結合型薬物)と結合していない薬物(非結合型薬物,free薬物)との濃度の総和である.
 血漿中で分子量の大きいアルブミンなどと結合した薬物は,組織中へ移行できない.一方,free薬物は組織膜を通過して血漿と組織との間を往復できる.このことから,血漿中と組織中の薬物濃度は平衡状態に維持される.さらに,血漿中のfree薬物が少なくなると結合型薬物が蛋白質から離れてfree薬物になり,結合型薬物濃度とfree薬物濃度の割合は一定になる.血漿中free薬物濃度は,作用部位でのfree薬物濃度を反映するので,血漿中濃度よりも効果と密接に関連することが知られている.このため,TDMにおいては,蛋白結合率が高く,蛋白濃度が病態により変化したり薬物相互作用などにより蛋白結合率が変化する薬物では,血漿中薬物濃度よりも血漿中free薬物濃度の測定が必要とされる.そのための試料としては限外濾過法により得られる血漿水などが用いられるが,その代替試料として髄液,唾液,涙液などが用いられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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