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増刊号 血液・尿以外の体液検査法 資料
Helicobacter pylori(Campylobacter pylori)の意義
著者: 深見トシヱ1
所属機関: 1(株)エス アール エル細胞形態部細菌課
ページ範囲:P.910 - P.912
文献購入ページに移動1983年オーストラリアのWaren1)とMarshall2)は,ヒトの胃粘膜から初めて螺旋状の細菌を分離することに成功し,この菌をCampylobacter Pyloriと命名した.また1988年Fox3,4)らは,フェレットの胃内から検出される,徴好気環境下で発育する彎曲したGram陰性桿菌に対して,Campylobacter mustelaeと命名した.次に1989年Goodwinは5)はリボ核酸,形態学,細胞脂肪酸,酵素,発育態度などの相違点から,Helicobacterと新しい属名を提案し,C.PyloriとC.mustelaeをCampylobacter属から移し,Helicobacter PyloriおよびH.mustelaeとした.その後,世界各国の研究者によって追試され,胃,十二指腸疾患の患者生検材料から,この菌が50〜100%と高率に検出されることが判明した.
一方,病理組織学的にH.pyloriは粘液に覆われた胃粘膜細胞表面に接着して,特に細胞間隙に,または腺窩の中に集簇6)していることが明らかにされた.病因論ではH.Pyloriは強いウレアーゼ活性を有し,胃内でアンモニアを産生し,このアンモニアを介する胃粘膜障害や,プロテアーゼ活性により胃粘膜糖蛋白質を分解して胃粘膜防御因子を弱めることにより胃腸粘膜障害を引き起こす,と推定7)されている.
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