文献詳細
増刊号 血液・尿以外の体液検査法
資料
ポリメレース・チェイン・リアクション(PCR)を用いた感染症の診断
著者: 永井良三1 大久保昭行1
所属機関: 1東京大学医学部臨床検査医学講座
ページ範囲:P.912 - P.914
文献概要
ポリメレース・チェイン・リアクション(PCR)は特定の遺伝子の一部を,2種類のプライマー,4種類のデオキシヌクレオチド,そしてDNAポリメレースを用いてin vitroで増幅する方法である.PCRは当初,大腸菌(Escherichia coli)由来のDNAポリメレースを用いて開発された.しかし大腸菌のDNAポリメレースは,試料DNAを一本鎖に変性させるための高温反応時に失活してしまい,増幅反応を一回行うごとに酵素を追加する必要があった.この問題を解決したのが耐熱性桿菌(Thermus aquaticus)から抽出されたTaqDNAポリメレースである.この酵素は94〜95℃の高温でも失活しないためDNAの一本鎖への変性,プライマーのアニーリング,DNA合成というステップが酵素を追加せずに繰り返し行うことが可能となった.PCRにより遺伝子の一部(1〜2kb以下)を数時間で20万〜100万倍に増幅することができる(図19).
PCRの開発により遺伝子の構造解析が容易になっただけでなく,本来生体に存在しないDNAの検出,すなわち感染性病原体の検出に新しい手法を導入することとなった.
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