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文献詳細

雑誌文献

検査と技術19巻4号

1991年04月発行

文献概要

講座 英語論文を読む・4

D型(デルタ)肝炎

著者: 弘田明成1

所属機関: 1駒沢病院内科

ページ範囲:P.380 - P.381

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 1977年にイタリアのトリノでRizzettoらによってデルタ抗原が発見されて以来,D型肝炎ウイルス(HDV)は世界中の研究と興味の的となった.デルタ抗原は初めはイタリアの慢性HBs抗原のキャリアの肝生検検体の免疫蛍光染色上の説明しにくい現象と思われていたが,今ではそれが特異的で重要なウイルスのヌクレオカプシド抗原であることが明らかとなった.デルタ肝炎ウイルスは“欠陥”RNAウイルスであって,B型肝炎ウイルスが提供する“ヘルパー作用”,すなわちHBs抗原の存在下でしか増殖することができない.このため,デルタ肝炎は血清中にHBs抗原を有する患者でしか発生しない.急性デルタ肝炎は“同時感染”,すなわちB型肝炎と同時に発症する場合と,“重感染”すなわち慢性B型肝炎患者ないしHBs抗原のキャリア状態に重複して発症する場合がある.いずれの場合であっても,デルタ肝炎はしばしば重篤となり,急性期に比較的高い死亡率を起こしたり,しばしば慢性化して肝硬変に進行したりする.デルタ肝炎は同時に変わった流行のしかたが見られ,ある限定された地域内で長期にわたる大流行をすることが一般的である.HDVは発見されてから10年のうちにそれが数々の急性および慢性肝疾患の重要な原因となっていることが明らかとなった.デルタ肝炎の予防や治療の方法は今,開発されつつあるところである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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