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文献詳細

雑誌文献

検査と技術19巻4号

1991年04月発行

トピックス

パルボウイルスと造血障害

著者: 小澤敬也1

所属機関: 1東京大学医科学研究所内科

ページ範囲:P.387 - P.388

文献概要

■B19パルボウイルス感染による貧血
 B19パルボウイルスは1975年に輸血用血液中に偶然に発見された一本鎖のDNAウイルス(5.6kb)で,ヒトに病気を起こすDNAウイルスの中では最も小さなものの一つとして知られている.B19パルボウイルスの感染により,小児では伝染性紅斑,成人ではウイルス性の多発性関節炎が出現する.溶血性貧血の患者に感染すると急性赤芽球癆(acute PRCA)を生じ,免疫不全状態にある患者では慢性骨髄不全を引き起こすことがある.また,妊婦の感染例では胎児水腫が起こり,流産の原因の一つとなっている.成人の半数近くがウイルス抗体陽性といわれており,不顕性感染が多いものと思われる.
 B19ウイルスの感染による造血障害は,抗体価の上昇によってウイルスが排除されるまでの一時的なものである.赤血球寿命の極端に短縮している溶血性貧血の患者では赤血球系造血が一時的に停止しただけで急激に貧血が進行し,生命が脅かされることもある.また,溶血性貧血ではウイルスの標的細胞である赤芽球系細胞が過形成であるため,体内で産生されるウイルス量も多くなり,造血系への影響がより強く現れるものと考えられる.骨髄所見としては,急性期には赤芽球の著減と巨大前赤芽球(giant pronormoblast)の出現が特徴的であり,回復期には著しい赤芽球過形成像が認められる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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