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文献詳細

雑誌文献

検査と技術19巻7号

1991年06月発行

文献概要

増刊号 臨床血液検査 I.形態学的検査 1.形態学的検査の実際

12)polymerase chain reaction法

著者: 北村聖1

所属機関: 1東京大学医学部臨床検査医学教室

ページ範囲:P.82 - P.87

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はじめに
 polymerase chain reaction(PCR)はDNAポリメラーゼ反応を利用したDNAの増幅法である.この方法は最近,開発され,短期間に多くの分野で応用された,遺伝子解析における画期的方法である.
 この反応の媒体である酵素DNAポリメラーゼは,一本鎖DNAを鋳型にして相補的なDNAを合成するが,その反応の開始にはプライマーすなわち開始点に当たる短い二重鎖部分を必要とする.したがって,適当なプライマーを利用することにより,それを開始点とする目的のDNA領域を合成できる.生体のDNAは通常,二本鎖であるので,分析したいDNA領域を挟む二つのプライマーを用いることにより,1回の反応でその領域を倍化できる.このDNAポリメラーゼ反応を繰り返すのがPCR法の原理であり,n回のサイクルにより原理的には2のn乗倍(2n)にDNAを増幅できることになる.重要な点は,PCR法を用いれば検体中の分析したいDNA領域だけを数十万倍にも増幅できるので,分析の大幅な高感度化,微量化を達成することができるようになったことである.PCRの感度は計算上も,文献的にも,1分子のDNAを検出できるという驚くべきものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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