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増刊号 臨床血液検査 I.形態学的検査 2.その他の検査 1)溶血性貧血の検査
(3)異常ヘモグロビン
著者: 原野昭雄1 原野恵子1 上田智2
所属機関: 1川崎医科大学生化学教室 2川崎医科大学検査診断学教室
ページ範囲:P.93 - P.95
文献購入ページに移動ヘモグロビン(hemoglobin;Hb)はα鎖と非α鎖(β,γ,δ)グロビンがそれぞれヘムと結合し会合して四量体(テトラマー)を形成した赤色の複合蛋白である.赤血球中の大部分はHbで占められており,その組成は正常人で,HbA(α2,β2,約90%),HbA2(α2δ2,約3%),HbF(α2γ2,約1%)のほか,HbAが糖と結合したHbA1(HbA1c)である.これらHbを構成するグロビンのアミノ酸配列上の1個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたHbが異常Hbである.またα鎖と非α鎖間の合成不均衡が原因のサラセミア症,特にα鎖の合成が抑制されたαサラセミア症患者の血中にみられるβ鎖やγ鎖が四量体を形成したHbH(β4)やHb Bart's(γ4)も異常Hbに数えられる.これらの異常Hbは,無症状なものから溶血性貧血,チアノーゼ,多血症など多様な臨床症状を呈する.
異常Hbはアミノ酸置換のため正常Hbとの間に電気的差異を生ずるので,その検索に電気泳動法が応用される.これには支持体の種類により,①セルロースアセテート(CA)膜電気泳動,②寒天ゲル電気泳動,③殿粉ゲル電気泳動や,④アンホライトを含むポリアクリルアミドゲルで等電点差を利用して分画する等電点電気泳動などがある.またアミノ酸の置換によって起こるHb分子の不安定化を検索する⑤イソプロパノール沈殿試験や,⑥熱不安定性試験などがある.
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