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増刊号 臨床血液検査 II.止血機能検査 2.検査の実際と症例の解釈 3)線溶検査 A.検査法
(5)組織型プラスミノゲンアクチベーター,プラスミノゲンアクチベーターインヒビター
著者: 渡辺尚1 玉田太朗1 坂田洋一2
所属機関: 1自治医科大学産婦人科 2自治医科大学血液医学研究部門止血血栓
ページ範囲:P.295 - P.299
文献購入ページに移動失血に対する防御作用の一つとして生じた止血栓も,長期に存在すると組織の虚血性変化をきたす結果となってしまう.これを防ぐための機構の一つが,血栓溶解反応である.血栓溶解反応とは「プラスミノゲンアクチベーター(PA)によるプラスミノゲンの限定分解に始まり,その際生じたプラスミンによる線維素(フィブリン)の溶解」と解釈される(図128).現在,主な血中PAとしては,血管内皮細胞由来の組織型PA(tPA)と,主として尿中に含まれるウロキナーゼ型PA(uPA)が知られているが,そのうち血栓溶解活性の律速酵素としてはtPAが重要視されている1).
血栓溶解反応は,主として血栓が生成するときにtPAとプラスミノゲンが血栓に特異的に結合濃縮し,血栓上で進行することが知られている2).しかし,あまり速く止血栓が溶解すると再出血の危険を惹起するため,これを適度に制御する機構がある.その開始段階ではプラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)が関与し,最終段階ではプラスミンのインヒビターが関与する.また,線溶反応とは,現在,より広義に解釈されており,単に血管内血栓溶解に関与するのみならず,腫瘍の浸潤や排卵などにも重要な働きを果たしていることが明らかにされつつあるため2),tPAおよびPAIの血中抗原量,活性の変動,その生理的意義,病態との関連などが各分野で注目を集め検討されている.
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