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講座 英語論文を読む・8
健常者における対側腎切除に対する心房性Na利尿ホルモンおよび残存腎の適応
著者: 弘田明成1
所属機関: 1駒沢病院内科
ページ範囲:P.780 - P.781
文献購入ページに移動 正常者においては,片腎切除後でも,代償性変化により水と電解質の恒常性(ホメオスターシス)を十分に維持することができる.この機能的適応の作用機序は実験系およびヒトにおける研究で明らかにされてきた.以前の研究でわれわれは,生体腎移植の健常提供者における腎切除後の尿細管および糸球体機能を検索した.腎切除後の最初の5日間以内に残存腎の糸球体濾過量が30%増加することがわかった.リチウムクリアランス法を用いることにより,初期には,この増加した濾過量の負荷は近位尿細管からより遠位のネフロンの部分へと移行することが示された.2〜4週以内に近位における液体の再吸収の増加が観察され,その結果,糸球体-尿細管バランスはほとんど正常化された.これらの代償性変化に寄与する因子は不明であるが,しかし血中Na利尿因子が関与しているかもしれないことは従来から示唆されていた.ANPはナトリウムと水の平衡化の維持に寄与していると考えられている.したがって,このホルモンの作用として,腎への直接効果によるナトリウム利尿作用およびレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対する調節作用が想定されてきた.われわれの知る限りでは,ANPが腎重量の急激な減少に対する機能的適応に関与していることに関する情報はない.
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