基礎から応用へ
換気力学
著者:
三上智久1
所属機関:
1北大・応用電気研究所
ページ範囲:P.20 - P.23
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最近における呼吸生理学の進歩はめざましく,公害問題とも相まって肺機能を定量的に検査する新しい方法がいろいろと考えられてきている.それに伴って,臨床生理検査室にも新しい肺機能検査機器が導入され,検査の種類や項目も増加している.これらの機器を取り扱うにあたって,個々の装置の操作手技や検査項目を漫然と羅列的におぼえておくだけでなく,肺というガス交換機能を主目的とした器官の,換気運動や呼吸様式の基礎をしっかりと身につけて検査機器を取り扱うことは非常にたいせつなことである.これによって,検査項目の横のつながりが理解できるであろうし,それぞれの検査結果の相関が読み取れ,ひいては測定誤差の発見に役だつことにもなるであろう.
そもそも肺における呼吸運動は,肺に空気を入れたり出したりする単純な往復動作で,つまりふいごや麻酔バッグのように簡単な動作原理である.しかし,肺疾患ではその度合いによって呼吸様式は微妙に変化するので,いろいろの角度からの検査によって,疾患について多くの情報を得ることができるのである.そこで,そういった呼吸のしくみの基礎について,物理的な立場から解説を試みることにする.