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文献詳細

雑誌文献

検査と技術2巻8号

1974年08月発行

文献概要

基礎から応用へ

ナメクジウオから人間へ・5

著者: 佐藤やす子1

所属機関: 1横浜市大第2解剖

ページ範囲:P.24 - P.27

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1.人類化を進めたもの——道具と言語
 今まで食物の獲得が人間を含めて霊長類にとってもきわめて重要な生活現象であること,またそのために生じた感覚とそれに関係する中枢神経系の発達,ことに哺乳類以下の動物にはない大脳の発達を促したことについて述べてきた.なかでもヒトの大脳における統合中枢の著しい発達は,これまで多くの研究者によって明らかにされてきたように,他の哺乳類の場合をはるかにこえている.人類の祖先として進化の道を歩みだしたオーストラロピテクスの時代からわずか200万年の間に,驚くほどの発達を遂げているのである(生命の歴史を古生代にまでさかのぼれば,200万年という年月はとるに足らない短時日である.これは,地球の歴史の長さを1年の長さに換算してみると,ヒトが出現したのは,12月31日の昼にあたるという計算があることを付け加えれば,もっと身近な感覚で受け取られるであろう).
 大脳が著しく発達した理由のひとつとして,食物の獲得に道具を使用したことを前にあげたが,"道具"の使用は,チンパンジーなどにもみられることでヒトに限ったことではない.では,共通の祖先から何が一方はヒトへ他は類人猿へと別の道を歩ませたのだろうか.もちろんただひとつの理由だけで説明できるものではないが,食物の獲得の方法という立場から1つだけ抜き出してみれば,ある道具を使ってもっと目的に合った別の道具を創り出したという点をあげることができよう.たとえば,火を使って硬い木のやりを作ったこと,またその木を得るのにもしかすると,よく切れるようにくふうされた石おのが使われたかもしれないこと,つまり狩猟→食物の獲得という目的に,いっそうかなったと思われる"やり"を,他の道具である石おのとか硬いただの木とか火を使ってくふうしたということである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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