icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術2巻9号

1974年09月発行

文献概要

基礎から応用へ

実験用動物—その生物学・1

著者: 佐藤やす子1

所属機関: 1横浜市大第2解剖

ページ範囲:P.24 - P.27

文献購入ページに移動
1.実験用動物とはなにを指すか
 実験に使う動物は,従来はばく然と実験用動物と総称的に言われていた.しかし現在では,実験成績の信頼性を高めるうえから,実験の目的にかなったように生産され,飼育された動物,つまり狭義の実験動物が,基礎的な研究にもあるいは臨床的な診断,たとえば細菌学的な分離・同定とか妊娠の診断用,ワクチンその他薬品の検定,ワクチンの生産,血清その他製剤の製造,毒性試験など多くの方面で使われるようになってきている.これらの狭義の実験動物はlaboratory animalsまたはexperimental animalsと呼ばれ,実験動物の重要性が言われるようになってから,その定義づけも明確化されてきた.したがって実験動物そのものの生物学や,最近では病理学的な研究にも力が注がれるようになってきた.
 実験の目的にかなったように生産されるというのは,もう少し具体的に言うと,たとえばあるマウスでF1×F1あるいはP×F1などを継続したのちに得られる動物(20世代以上継続したものは近交系,inbred strain**と呼ばれる)は,系統内では遺伝子組成がほとんど同じであると同時に,遺伝子型はホモ(homo type)が非常に多くなる.このことは,近交によって遺伝的に均一化されまた恒久化された遺伝子型による表現型すなわち,われわれの目にふれるような形質がいつも一定し画一化した実験動物が,理論的には入手できることになる.これは実験動物としての条件を満足させるもののひとつであっていわば,実験動物は人工的に作られた人工動物ともいうべきもので,この意味で生きた試薬であり,測定器具であると考えることができよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?