文献詳細
文献概要
マスターしよう検査技術
パラフィン切片からのDNA抽出
著者: 土橋洋1 柴田龍弘1 川渕紅代1
所属機関: 1東京大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.57 - P.62
文献購入ページに移動近年,分子生物学の分野における進歩にはめざましいものがあり,またその手法がどんどん簡便化され病理学の分野にも“分子病理学”という名で普及している.それに大きく貢献しているのがPCR(polymerase chain reaction)法であり,つい先日までは細菌学的検索のみに頼らざるを得なかった感染症の診断も,喀痰,パラフィン切片からのDNA抽出,そしてPCRといった手順で,結核菌,ニューモシスチスなどをも短時間で検出できる時代となった.
病理学の領域で常に主役の座を占めてきたパラフィン切片は,HE染色,特殊染色から酵素抗体法を用いた免疫組織化学,in situ hybridizationとあらゆる手技に対して適応し,今またDNA診断に関しても主役であり続けることが可能となった.上述の感染症の診断のみならず,癌遺伝子,癌抑制遺伝子といった最近の注目の的となっている対照の検索にも,パラフィンブロックから抽出したDNAを用いてPCR,Southern blottingが行われている.これは,どの施設にも過去何年,何十年にわたり保管されているパラフィンブロックの数を考えると,レトロスペクティヴな検索ができるという非常に大きな意味を持つのである.
掲載誌情報