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放射線抵抗性菌
著者: 北山滋1
所属機関: 1理化学研究所細胞生理学研究室
ページ範囲:P.1031 - P.1032
文献購入ページに移動牛肉の保存期間の延長を目的として放射線照射した牛肉に残存した細菌,Deinococcus radiodurans(最初はMicrococcus属に分類された)が1956年に米国で分離された1).また同一菌種ながら別株として報告されている,D.radiodurans Sark株も病院の空気浮遊菌として採取されている.それ以外にもさまざまな試料からさまざまな放射線抵抗性菌が分離されているが,それらはいくつかの分類学上異なる種類に属しているので特定の細菌種のみが放射線に抵抗性を示すのではない(表)2).最初に分離されたD.radiodurans R1株はその後,牧草地の小川,食肉工場内あるいは獣皮からも分離されているので,この菌の生存と放射線とは特に関係づける必要はないように思われる.
しかし,放射線に常時さらされて選択濃縮される環境でもない自然界に,このように異常ともいえる放射線抵抗性を持った細菌がなぜ存在するかは興味深い.
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