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文献詳細

雑誌文献

検査と技術21巻4号

1993年04月発行

文献概要

トピックス

マイナス鎖HCV RNA

著者: 竹原徹郎1 林紀夫1

所属機関: 1大阪大学医学部第一内科

ページ範囲:P.375 - P.376

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 近年,非B型肝炎の原因ウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)が分子生物学的に同定され1),全遺伝子構造が決定された.以来,HCV抗体の検出系の進歩は著しいが,HCVそのものの検出は,大量の血液から出発してHCVコア抗原を検出し得たという報告以外は,RT/PCR(reverse transcription and polymerase chain reaction)法を用いた核酸検出がもっぱら行われている.同法は血液からのHCVの検出には高感度で優れた方法であるが,組織からHCVを検出する場合には,組織からウイルスを検出し得たとしても,血液の付着による影響が否定できないため,それが組織内感染を意味するのか否かを判定することができない.したがって,組織内感染の有無を明らかにするためには,感染組織内においてウイルスの増殖中間体を検出することが必要である.HCVの増殖様式は現在明らかにされていないが,HCVは約9,400ヌクレオチドのプラス極性の一本鎖のRNAを持ち,アミノ酸配列の類似性からフラビウイルスおよびペスチウイルスに近縁のウイルスであると考えられている.これらのウイルスは感染細胞内でマイナス鎖のRNAを合成し,これを鋳型にして増殖することから,HCVの感染組織においてもマイナス鎖のRNAが存在すると考えられ,マイナス鎖のHCV RNAの検出はHCVの組織内感染の有無を判定するうえで有用であると考えられる2〜4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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