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文献詳細

雑誌文献

検査と技術21巻6号

1993年05月発行

文献概要

けんさアラカルト

ヒトの大脳半球の機能的,形態的非対称性の起源

著者: 小嶋祥三1

所属機関: 1京都大学霊長類研究所

ページ範囲:P.418 - P.418

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 ヒトとその他の動物を分けるもの,それはなんだろうか.ヒトは二足で歩き,言葉を話し,道具を作り,使う.また,ヒトは利き手を持ち,巧みに模倣する動物でもある.このように考えてくると,ヒトを人間らしくしているものは,ヒトの大脳左半球であることに気がつく.すなわち,ヒトの利き手は右であり,主に左半球がその運動を制御している.左半球の言語関連領域が損傷されると,言葉を話したり理解することに障害が出てくる(失語症).観念失行や観念運動失行は道具(物品)使用や模倣などの高次運動機能の障害であるが,やはり左半球の損傷によって生ずる.ところで,これらヒトを特徴づけるものの萌芽が,チンパンジーなどの大型類人猿にみられることが最近明らかになってきた.
 このようにヒトの大脳半球の機能には左右差がみられるが,形態的にも左右で異なっていることがわかっている.ゲシュヴィントらは音声言語に関係する左の側頭平面が右よりも大きいことを報告し,広く認められるようになった.さて,脳の機能的,形態的非対称はヒト以外の霊長類にまでさかのぼることができるのだろうか.類人猿を含め,サルがヒトのように右利きであることを十分な根拠を持って示した論文はない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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