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腎症候性出血熱
著者: 富山哲雄1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院分院検査部
ページ範囲:P.79 - P.81
文献購入ページに移動1951年5月,朝鮮戦争に出兵した国連軍は鉄原,金化,平康を中心とする中部戦線で未知の熱性疾患に遭遇し,この年,患者は827名に達し,1954年までに3,000名を超えた.この熱性疾患は,高熱,食欲不振,悪心,筋肉痛,腹痛,腎不全を伴い,当時15%の死亡率を示す重大なものであった.初めは発疹チフス,レプトスピラ症などが疑われたが,その後の研究から,1942年日本陸軍石井部隊により旧満洲から報告された流行性出血熱,あるいは旧ソ連の出血性ネフローゼ腎炎に相当するものと判定され,韓国型出血熱と呼ばれた.1982年,WHOはこれを腎症候性出血熱(hemorrhagic fever with renal syndrome;HFRS)と称するよう勧告した.
国連軍はこの疾患に対処するため,1952年広壮里に出血熱センターを設置し,以後10年余り,米国の多数のウイルス学者を動員し,チンパンジーまで使って病原ウイルスの分離,伝播様式の解明に努めたが成功しなかった.
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