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文献詳細

雑誌文献

検査と技術22巻11号

1994年10月発行

トピックス

多剤耐性因子遺伝子

著者: 加藤詳子1 西村純二1

所属機関: 1九州大学医学部第三内科

ページ範囲:P.909 - P.910

文献概要

 腫瘍細胞が抗癌剤に対してあらかじめあるいは,治療中に耐性を獲得することがしばしば経験され,悪性腫瘍の治療上の大きな問題となっている.アントラサイクリン,ビンカアルカロイドなどの薬剤に耐性を獲得した細胞が,化学構造,作用機序で類似しない多くの薬剤に対して,同時に耐性を示すことがあり,この現象は多剤耐性(multidrug resistance;MDR)と呼ばれている1).多くの多剤耐性細胞では,mdr-1遺伝子によってコードされるP-糖蛋白と呼ばれる膜蛋白が発現し,薬剤をエネルギー依存性に細胞外へ排出し,細胞内薬剤濃度を低く保つ機序が働いている(図1).mdr-1遺伝子がクローニングされ,P-糖蛋白の構造,機能が明らかにされた2)
 mdr-1遺伝子は第7番染色体長腕に位置し,mRNAは約4.5kbの長さである.その産物であるP-糖蛋白は1,280個のアミノ酸から成り,分子量170kDaの細胞膜を12回貫通している膜蛋白である.細胞外の部分に糖鎖が結合し,細胞内の部分にはATP結合部位が存在している.P-糖蛋白はヒトの副腎髄質,胆管上皮,腸上皮などの正常組織にも発現しており,生理的機能を担っていると考えられている.多剤耐性細胞ではmdr-1遺伝子の増幅が認められることもあるが,発現の調節機構に異常をきたしていることが多い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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