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文献詳細

雑誌文献

検査と技術22巻13号

1994年12月発行

文献概要

生体のメカニズム 遺伝子の異常・12

遺伝子治療

著者: 平井久丸1

所属機関: 1東京大学医学部第三内科

ページ範囲:P.1091 - P.1094

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はじめに
 近年の目ざましい遺伝子工学の進歩によって多くの遺伝病の原因遺伝子が同定・単離され,病態の分子機構が明らかになってきた.原因となる遺伝子の異常がDNAレベルで明らかにされると,この遺伝子を正常に戻す遺伝子治療の可能性が考えられるようになった.1970年代に倫理的・社会的問題を解決することなく2例の遺伝子治療が行われたが,それらの結果に関しては報告されていない.以後,長年にわたり技術的問題や倫理的問題が検討されてきたが,1990年の9月に合意の得られた遺伝子治療の第1例がNIHで施行された1).患者はADA欠損症の4歳の女児であり,外来性ADA遺伝子を発現させた患者自身のT細胞を患者に戻すことによって行われた.
 すでにNIHではrecombinant DNA advisory committee(RAC)によって癌に対する遺伝子治療も承認されている.この内容はtumor necrosis factor(TNF)の遺伝子をtumor-infiltrating lymphocytes(TILs)に導入し患者に戻すという方法である2).このように遺伝子治療はその技術的問題のみならず倫理的・社会的問題を乗り越えて実用化へ移されつつある.本稿では遺伝子治療について概説し,今後の問題についても展望してみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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