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文献詳細

雑誌文献

検査と技術22巻5号

1994年04月発行

文献概要

話題

神経成長因子(NGF)

著者: 古川美子1

所属機関: 1岐阜薬科大学分子生物学教室

ページ範囲:P.271 - P.271

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 神経成長因子(nerve growth factor;NGF)とは,文字どおり神経細胞(ニューロン)を成長させる(大きくするのではなく分化・成熟させる)因子である.NGFは,神経栄養因子(neurotrophic factor;NTF)と総称される一群の物質(ほとんどは蛋白質)の中で最も古くから,そして最も詳細に研究されてきた因子であり,分子量約26,000の蛋白質である1).NTFの機能として,①ニューロンが他の細胞種よりはるかに長い寿命を維持する(ニューロンは死ぬことがあっても分裂増殖により補われない,すなわち個体と同じだけの寿命を保つ)ために必要,②ニューロンは神経情報を伝達するために細胞体から長い線維(軸索)を伸ばしているが,間違いなく轄索を目的地にまで伸ばしていくために必要,③一口にニューロンといっても多種多様存在し,その分布も担っている機能もさまざまであるが,ニューロンがそれぞれの部位でそれぞれ特定の機能を持つようになる(分化・成熟)ために必要,などが考えられている.NGFは,種々のニューロンのうち末梢の交感ニューロン,知覚ニューロン,脳の一部のコリン作動性ニューロンなどに作用する.NGFはこれらのニューロンの投射部位(すなわち軸索の伸びている先)で合成され,受容体と呼ばれる特定の部位に結合してニューロン内に取り込まれ,細胞体へ運ばれ機能する2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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